サティヤ サイババの御言葉

日付:1966年3月17日
場所:ボンベイ(ムンバイ)のヴァッラバーイ パテール スタジアム
ヴァッラバーイ パテール スタジアムでの御講話より

怒りと色欲

母なるバーラタ〔インド〕は、生まれた時から自分は遍在なるパラブラフマンと一体であることを知っていたヴァーマデーヴァの母国であり、舌足らずのころからナーラーヤナ神の御名を唱えていたプラフラーダの母国であり、少年のころから無類なる不二一元の認識をしていた聖賢シュカ〔スカ〕の母国であり、10代で複雑なヴェーダーンタ哲学〔ウパニシャッド〕の大家となったシャンカラーチャーリヤの母国です。

母なるバーラタは、子獅子(ライオン)たちと戯れ遊んだバラタ、無敵の矢を両手どちらでも巧みに射ることのできたアルジュナ、師であったサマルタ ラーマダースの小さな願いをかなえるために恐ろしい困難に立ち向かったシヴァージといった、名立たる英雄たちの母国です。

母なるバーラタの子供たちの中には、シビ、ハリシュチャンドラ、カルナといった、欲望を放棄した魂の輝かしい手本である男性がいます。そして、シーター、サーヴィートリー、ダマヤンティーといった、美徳の天空に美しく輝く星である女性がいます。当然ながら、インドは地球のグル〔導師〕の座、全人類の教師に上昇しました。これらの遺産が急速に忘れられ、インドは正統な方向から離れる旅を始めました。

こういった古来よりの伝統の教えによると、人間は単なる臓器と感覚器官と感覚の寄せ集めではありません。人間は、知性に支配されており、また、多くの過去生を通して身につけた慣習や記憶によって形作られている存在です。その知性そのものは道具であり、その能力の範囲は限られています。知性ではたどり着けないゴールは数多くあります。そこには天から恩寵と御力が下ったときにだけ、到着することができます。エゴを完全にその御力に明け渡すことによって、それは下り、あなたをその恩寵と御力そのもので満たすのです。

平安を得るために純粋で汚れなき心を持ちなさい

ヴィビーシャナ〔ラーヴァナの弟〕はエゴを完全に明け渡すことができました。そのため、すぐに〔ラーマに〕受け入れられ、信頼されました。スグリーヴァ〔猿王〕がその段階に到るには、もっと長い時間がかかりました。なぜなら、スグリーヴァはラーマに叶えてほしいと思っていた個人的な願いを持っていたからです。その上、スグリーヴァのラーマへの信心は疑いでいふさがれていたからです。「ラーマは公言している能力を本当に備えているのか? ラーマはヴァーリ〔スグリーヴァの兄〕のような恐ろしい敵を殺すことができるのか?」と。スグリーヴァは、その疑いが晴れた時、初めてラーマに自分自身を明け渡すことができました。

『ラーマーヤナ』といえば、二人の脇役を取り巻く2つの小さな出来事がこの一大叙事詩の火付け役となったことに、皆さんは気づくでしょう。それは、マンタラー〔カイケーイー妃の侍女〕の恨みと、シュールパナカー〔ラーヴァナの妹〕の色欲、つまり、怒りと色欲です。あなた方は、各人の人生という叙事詩の中で怒りと色欲に用心しなければいけません。平安と喜びを破壊するには、ほんの小さなこの2つの火花だけで事足ります。あなたがそれらの火花に滅ぼされる前に、怒りと色欲を根元から引き抜きなさい。

心(マインド)は、好き嫌いを持ち、喜びを求めて物質世界へと流れていきます。五感が活動をやめれば、心の根絶(マノーマーナサ)を達成することができます。火葬用の薪の山の上に遺体を置いて火を点けると、遺体も薪の山も燃え尽きて灰になります。それと同じように、五感の活動は心の縦糸と横糸であり、五感が活動をやめると、心は消滅します。心は餓え死にするのです。

喜びと平安を手に入れるには、清らかで汚れのない心、エゴイズムとその所産――色欲、貪欲、妬み、怒り、憎悪といったもの――に汚されていない純粋な心を育まなければなりません。そのためには、善い仲間(サット サンガ)を求め、善い行い(サット カルマ)をし、善い思考(サット アーローチャナ)だけを抱き、善い書物(サット グランタ)を読むことです。

あなたは何千という善いものを見たり、何千という善い言葉を聞いたり、何千という善い本を読んだりするかもしれませんが、せめてその一つだけでも実行しなければ、あなたのハートという鏡に付いた汚れの数々を拭い去ることはできないでしょう。主がそこに映ることはできないでしょう。

まったき信心を備えた継続的な実行は、ナラ(人)をナーラーヤナ(神)に、マーナヴァ(人)をマーダヴァ(神)へと変えていきます。なぜなら、ナーラーヤナはあなたの真の本性であり、マーダヴァはあなたの真の神髄だからです。あなたは海の一つの波にほかなりません。それを知りなさい。そうすれば、あなたは自由になります。

サイババ述

翻訳:サティヤ・サイ出版協会
出典:Sathya Sai Speaks Vol.6 C8